大型連休のショッピングモール。セール中の店内は、歩くのも困難なほどの人混みだった。 「パパ、あっちのゲームコーナー見てくる!」 小学3年生の陸が指をさし、返事を聞く前に人混みの中へ消えてしまった。
「あ、こら、待ちなさい!」 父の健一は叫んだが、周囲の喧騒にかき消される。数秒前まで見えていた、青いキャップの帽子が、あっという間に見失われた。慌ててゲームコーナーへ向かうが、そこには家族連れが溢れ、陸の姿は見当たらない。
(広い館内、どこを探せばいいんだ……。迷子放送をしてもらうべきか?)
かつてなら、途方に暮れる場面だ。しかし、健一は冷静にアプリを起動した。陸のランドセル……ではなく、今日は外出用のボディバッグの中に子供用GPSが入っている。
「……2階のトイレ付近か。逆方向だな」
陸はゲームコーナーに向かったふりをして、実は途中で目に入った別の店に引き寄せられたようだった。GPSの現在地特定を頼りに進むと、エスカレーターの脇で、きょろきょろと辺りを見回す陸を発見した。
「パパ! 迷子になっちゃったかと思った!」 「こっちのセリフだよ。でも、すぐに見つけられてよかった」
迷子防止のために持たせたGPS。人混みの中でも、確実なデータとして居場所を教えてくれるその頼もしさは、何物にも代えがたい安心だった。